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それに「昂希」と呼んだ。上司なのかもしれないけれど。顔を上げて優羽はじっとその人を見た。
彼はにこりと笑う。
「ここの事務所の所長で昂希の叔父の片桐と言います」
(お……叔父っ!? 親戚? 言われてみれば似てる! けど……)
慌てて優羽は丁寧に頭を下げる。
「昂希さんとお付き合いさせて頂いています。吉野優羽と申します。すみません、こんなところで親戚の方にお会いすると思わなくて……」
そして手にしていたお菓子の紙袋を片桐に渡した。どちらにしても事務所の皆で食べてもらおうと思ったものだ。
「こちら、お口に合えばいいんですけど」
受け取った片桐はその紙袋を見て笑顔を見せる。
「あ! ここ有名ですよね。昂希にではなくていいのかな?」
「急にお邪魔してしまったので、事務所の皆さんへと思いました。おこがましいですね……」
「有名なケーキ屋さんのお菓子だ。おこがましいなんて。みんな喜びますよ。私も大好きです」
とても落ち着いた雰囲気で優羽に笑顔を向けてくれて優しい人だった。
「どうぞ。ご案内しましょう」
そう言って片桐は中に案内してくれた。
事務所の中は細かく区切られていて、弁護士ごとに部屋が与えられているようだった。絨毯の敷かれた廊下は静かだ。
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