16.凶器になると怖いそうです

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 その中の一つのドアの前で片桐は足を止め、ドアを軽くノックする。 「昂希、今いいか?」 「どうぞ」  中から声が聞こえて優羽はどきんとする。仕事中の城ヶ崎を目にするのは、あの会社で見たとき以来だ。 「大事な人を連れてきたぞ」  デスクの向こうで城ヶ崎が驚いた顔をしていた。 「優羽。どうして一緒なんだ?」 「受付で偶然一緒になって。ご挨拶させてもらったよ。差入れもいただいてしまった」  そう言って、片桐は手に持った紙袋を軽く掲げる。  デスクの前から立ち上がった城ケ崎はものすごい早足でドアの前まで来て優羽の肩に触れた。 「こっち来て」 「紹介してくれると言ったよな?」  その場に響いたのは片桐の声だ。  にっこり笑った片桐に城ヶ崎はぎりっと歯ぎしりして冒頭のような状況になったわけである。  それでもにらみ合いをしていても仕方がないと思ったのか、城ヶ崎は優羽の肩を軽く抱いて執務用の部屋の中に入れてくれて、秘書の人にインターフォンでコーヒーまで頼んでいた。  執務室の中は入ってすぐのところにソファセットが置いてあり、優羽は打合せで使うんだろうなと漠然と考えて、城ヶ崎に勧められるまま隣の席に座った。  シンプルなデザインでとてもモダンなテーブルとソファだ。
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