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「吉野さん、このテーブル重厚だけど、飾り一つ置いてなくて不愛想だと思わない?」
シンプルなところが城ヶ崎らしいと思ったので不愛想だとは思わなかったが、優羽は軽く首を傾げる。
「テーブルの上になにか置いてるとね、もめたときに凶器になるといけないから置いていないんだよね」
──こ、怖い! けど、納得だわ。
「ソファの一人掛けを四脚置いているのも同じ理由だよ。近いと取っ組み合いが始まったら困るから」
「え? そんなに激しいお仕事なんですか?」
優羽の顔色が悪くなってしまっている。
「優羽、そんなことはあまりないから。所長、優羽を脅かさないでくださいね」
「でも前に離婚協議の時に、テーブルの上の置物を破壊されて、昂希、ぶちぎれて賠償請求しようとしたじゃないか」
「結局止めたじゃないですか。まあ俺にも責任あるかなって思ったから」
そんな話を聞いて優羽はくすくすっと笑ってしまう。自分の置物を破壊されて静かに怒る城ヶ崎が想像できてしまったからだ。
片桐は優羽の方を真っすぐ見た。
「吉野さん、大変でしたね?」
それで優羽は片桐もあの会社での件を知っているのだと理解する。優羽は片桐に向かって頭を下げた。
「その節は、ありがとうございました」
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