16.凶器になると怖いそうです

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 総務の仕事の中で役員用の応接室をリフォームする話が出た時、インテリアコーディネーターから見せられたカタログのひとつに、あのソファを見た気がする。  ちらっと優羽は城ヶ崎のリビングのソファを見た。 (あのソファ、確か三百万円って書いてあったような……。もしかして、昂希くんていわゆるとってもハイスペックな人だったのかしら)  今更である。  けれど再会したのが同窓会で、まるで学校にいた時の延長のような感覚だったから、改めて今まで城ヶ崎が築いてきたものが、他から見たら羨望の対象であると、優羽は今気づいたのだ。  優羽はエプロンを付け、温野菜の準備をしながら余った野菜でスープを作る。  スープの下地になるブイヨンはたくさん作って冷凍しておけば他でも使うことができるものだ。  ブイヨンができていることを確認して、今日のスープの分は残してあとは小分けにして冷ましておくことにした。  急に言われた『渡米』という言葉にかなり動揺してしまっていることは自覚していた。  けどいつもの手順で料理をすることで、少しずつ心が落ち着いていく。 「今すぐ、答えは出ないわね」  それでも仮に距離が離れてしまったとしても、きっと心が離れることはない。  自分がどうしたいのか。  考えた結果を城ヶ崎とまた二人で擦り合わせて、二人で今後のことを考えていこう。  そう思ったら、またさらに気持ちは落ち着いた。    
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