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抱きしめられたまま後ろから耳元に囁かれる。
「いない。そんなのいないよ。自宅に呼んだり泊めたり、ましてやこの俺がカギなんて渡すわけがない。カギを渡したのは優羽が生まれて初めてだ」
「生まれて……って」
子供のように主張する城ヶ崎は普段のキレッキレな様子とは全く違う。
優羽に甘えて、優羽を甘やかす彼氏だ。耳元で囁く声すら蕩けそうだ。
「なんだ? 本当のことだろう?」
「そっか。嬉しいな」
「たまらない。優羽ってなんでそんなに可愛いんだろう」
カギを渡したのも、泊めたのも優羽だけだと言われて、優羽はとても嬉しくなったのだった。
一人で普段使うには大きいんじゃないかと優羽には感じるダイニングテーブルに二人で向かい合って座った。
「美味い。優羽は料理が上手なんだな」
優羽が作ったご飯を目の前の城ヶ崎が本当に美味しそうに食べてくれている。
「お口にあったんなら良かった。昂希くんはグルメだから」
城ヶ崎はきょとっとして顔を上げた。
「そんなことはないぞ」
「だって、いつも素敵なお店ばかり案内されるもの」
「それはそうだろう。口説きたい女性を連れていくのに全力出すのは普通じゃないのか」
「く……くど……」
まっすぐに言われて優羽は真っ赤になって言葉をなくす。
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