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こんな妖艶な雰囲気で見つめられることなんてなかった。
甘くてそれでいて艶を含んでいて、逃げることができないような雰囲気だ。
すっとテーブルに伸びた指が繊細なグラスの足をそっと掴む。グラスを傾けて城ヶ崎がワインを飲んだ。
「甘いな」
そんなきっと甘くて好みではないものを、優羽のために選んでくれたのだ。
怖いのか、優しいのかよく分からない。
「さて、優羽。話をしようか?」
レストランの淡い光の中で優羽に向かって目を細める城ヶ崎はとてつもなく綺麗だった。
「許してほしい?」
こくっと優羽が頷く。
「可愛いね。素直なところが変わっていない。優しくて、素直で優羽はみんなに好かれてた。指導係だった? 後輩の女の子もすごく優羽のこと信頼している感じだったよね。仕事、楽しい?」
「お仕事は大変なこともあるけど、楽しいの」
だから辞めたくないという気持ちが伝わってほしい。
優羽はそんなふうに思っていたけれど、それが弱みとなっていることに気づいてはいなかった。
「優羽が楽しいと思っていることを奪うことはしないよ」
では許してくれるということだろうか?
「でも、俺簡単には許さない性格なんだよね」
「それは直した方がいいと思う」
つい口からこぼれてしまった。
「え? 何か言った?」
「いえ。何も」
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