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城ヶ崎がわざとらしくにこりと笑う。
「突き飛ばされたところが痛いなあ」
「本当にごめんなさい」
(けがしてないって言ったのに!)
それでもそう言われるともはや謝ることしかできない優羽だ。
そうして、食べたか食べていないか分からない食事を優羽は終えた。
食事代を請求されるかと思ったら、城ヶ崎がさっさと払ってしまう。
「城ヶ崎くん、私、払うわ」
「いいよ。これくらい」
これくらいと城ヶ崎は言うが、優羽のお給料ならばランチ何回分なのだろうか?という金額である。
もっと膨大な金額を請求するからいい、ということなのかもしれないと思いつくと、優羽はつい通帳の預金残高を想像して血の気が引いた。
(すごく膨大な金額を請求されたら払えない!)
城ヶ崎ならそれも可能な気がするのだ。レストランを出て、その場に優羽は立ち尽くす。
「優羽? どうだった?」
「うん。とても美味しかった……かな?」
最後の晩餐かもしれない。
「俺、優羽とまだゆっくり話したいんだけどいいかな?」
その笑顔に逆らえるわけがなかった。
「うん……」
そうして優羽が城ヶ崎に連れていかれたのは、レストランが入っているホテルのロビーだ。
「ここで待ってて」と言われて、ロビーのソファに優羽は座る。
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