21.ずうっと一緒にいること

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「コーヒーは止めておく。この時間だし」 「ほうじ茶はどう?」 「ほうじ茶?」  城ヶ崎は不思議そうな顔をしていた。 「カフェインはコーヒーよりかなり少ないし、ほうじ茶というくらいだから焙じてあるの。香りがあるからコーヒーみたいに気持ちが落ち着く効果があるのよ。あ、私の場合はなんだけど」  書類を確認する手を止めて、心配そうに顔を覗き込んだ優羽の頬を城ヶ崎が指の背でそっと撫でる。 「じゃあ、それをもらう。悪いな、心配させて。今までは顧問先の業務が多かったんだが、急遽刑事事件を引き受けることになって。慣れていないから少し大変なんだ」  優羽が覗き込んだ城ヶ崎の顔が珍しく疲れている。それは慣れていない案件を受けているからなのかも知れなかった。 「刑事事件……」 「顧問先の業務とは全く違うし、一応それなりに勉強はしているが刑事事件は動き方も全く違う。かなりのスピード感を要求される。警察は決められた時間以内に送検をきめなくてはいかないからな。さらに依頼人にある程度寄り添うことも重視されるんだ。かと言って肩入れしすぎてもいけない。難しいけれど、いい経験をさせてもらっているよ」 「私では力になれないけれど、なにかできることがあったら言ってね」
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