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3.記憶の中のあなたに
「どうして俯くんだ?」
思わず俯いてしまったから城ヶ崎の顔は見えないけれど、少しだけからかうような響きを帯びていた。
そんな声を聞いたらますます顔は上げられないし、どんどん鼓動は大きくなっていくし、顔も熱くなってくる。
「優羽」
甘く呼ぶ声。
「優羽」と。そんな声が記憶に引っかかったような気がする。
「呼んだ……? そうやって」
優羽が城ヶ崎を見ると、ひどく優しい顔をしてソファから立ち上がった城ケ崎が、ゆっくりと優羽に近づいてくる。
優羽はそれを見上げることしかできなかった。
「呼んだ。何度も、何度も呼んだ」
城ヶ崎が優羽をソファから抱き上げる。
「忘れているなら仕方ない。あの時の記憶が薄れているなら思い出させてやるよ。優羽がどれだけ甘い声で俺のこと誘ったとか、俺の身体にしがみついてイったとか、可愛くねだったこととか」
「ぜ、絶対うそ!」
優羽はあまり、そういうことが好きではなくて、ねだるなんてことはありえない。
「さあな? 優羽の身体に聞いてみようか?」
いたずらっぽい顔をした城ヶ崎は優羽をベッドに降ろし、指を絡めて優羽を上から覗き込む。
きゅっと口角の上がった笑顔は優羽の好きなあの表情だった。
「これで突きとばせないよな?」
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