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手を繋いだまま、その逆の手で優羽の頬を撫でた。
「真っ赤だ」
だって、すごくどきどきするから。
頬に指で触れられてとても甘くて熱っぽい顔で覗き込まれて、端正で整った顔が近くて、とくとくいう自分の鼓動が大きく響く。
「酔って甘える優羽も可愛いけど、恥ずかしがっている優羽も可愛いな」
「ねえ? あの日、なにがあったの?」
「教えてやらない。優羽はきっと覚えてる。だから、思い出せ」
城ヶ崎は器用に優羽のカーディガンのボタンを片手で一つ一つ外していく。
思わずその様子を目で追ってしまっていたら「優羽」と呼ばれて顔を上げた。
城ヶ崎の瞳が優羽を捕らえている。
まっすぐで煌めいていて欲情と色香に溢れた瞳から目を逸らすことなんてできなかった。
ゆっくりと顔が近づいてきても、優羽はぼうっと見とれることしかできず、気づいたらそっと唇が重なっている。
何度も柔らかく軽く触れるだけの唇が重なる。
優羽は思わず目を閉じて空いていた方の手で城ヶ崎のスーツの襟をきゅうっと握ってしまった。
目を閉じてしまったことでさらに唇の感触を感じる。
それは重ねる、と言うよりも唇で味わっているように感じた。
触れ合う感触、お互いの熱、だんだん乱れていく呼吸。
それをキスで感じ取られている。
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