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実はそうではなかったことを優羽だけが知らない。
当時、優羽は図書室で本を読むのが好きだった。
窓際で毎日本を読んでいる姿を運動部の生徒が見ていて、誰かが「窓際のお姫様のようだね」と言ったのだ。
だからこそ、優羽がハマり役だと選ばれた。
その相手の王子様役が城ヶ崎だったのだ。
当時から城ヶ崎は大人っぽくて、陸上部でスラリとしていてその走る姿がカッコいいと、とても人気があった。
確か、県大会に出たかなんかで表彰されていた気がする。
優羽自身はとにかく運動神経はあまり良くなかったので、体育祭などで活躍するその姿にはすごいなぁと尊敬しつつ別の世界の人のようだと思っていたのに、突然の接点ができて、とても驚いたものだ。
しかも城ヶ崎は運動ができるだけではなく、頭もとても良くて、学年でもトップクラスの成績だった記憶がある。
そんな城ヶ崎だから、優羽はそれまでは本当に接点がなくて、同じクラスでも話したことなんてほとんどなかった。
物静かな優羽と華やかでいつも人に囲まれていた城ヶ崎。
台本の読み合わせだとクラスに残された時に、なぜか二人きりになってしまったことがあった。
窓の外からは部活動の声が聞こえていて、夏から秋に向かう爽やかな風が窓から入ってきていた。
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