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優羽は素直に電話に出ることにした。
「はい……」
『俺だけど』
名前を名乗るわけでもないその口調に、当然自分だと分かっているんだろうという響きがあった。
「詐欺なの?」
『今時そんな詐欺はないだろう。もっと巧妙らしいぞ』
──真面目なの?
ふざけているのか真面目なのか分からなくて、優羽はついくすっと笑ってしまった。
『優羽、今もしかして笑った?』
「ええ」
チッと舌打ちが電話から聞こえてくる。
(な、なんで舌打ち!?)
『俺のいない所で無防備に笑わないでくれる?』
言っていることが無茶苦茶だ。
「全く……何言ってるの?」
『優羽ってもともと優しげな顔してるんだけど、笑うとそれがさらに柔らかくなって、本当に可愛いんだよ。他の奴に見られたくない』
意味が分からない。
「今、お家にいるのよ。誰も見てないから」
「ならいい」
「急にどうしたの? なんの用なの?」
『今週末、待ち合わせしよう』
「待ち合わせ?」
急に待ち合わせなどと言われて優羽の声はつい警戒してしまったかもしれない。
『優羽、俺の言うことは聞いておいたほうがいいと思うぞ』
そうなのだった。弱味を握られているのは間違いはない。
『土曜日の10時に駅前のカフェの前な』
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