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忙しいのかもしれないが、それだけ言うと城ヶ崎はさっさと電話を切ってしまった。
(全くもう、俺様なんだから……)
テキパキと物事を進めていくのは城ヶ崎にリーダーシップがあるからだ。文句を言いながらもみんなそんなところを頼りにしていた。
土曜日、どんな格好をして行けばいいのだろう?
つい、そんなことを考えてしまう優羽は(違う! 違う! 会社に言われたら困るから!)と心の中で必死で打ち消す。
散々迷って、優羽はオフホワイトのニットとグレンチェックのスカートを選択したのだった。それに黒の編み上げブーツを合わせた。
コートを羽織って玄関の鏡で確認する。久々の友人と会う格好としては悪くないのではないだろうか。
駅前まで行くとカフェの前に城ヶ崎はすでにいて、カフェの前に立っているのが離れた場所からでも分かった。
チャコールグレーのチェスターコートと、黒のタートルネック、デニムのパンツと至ってシンプルな普通の服装なのだけれど、そのスタイルと端正な顔立ちが際立っていて、伏し目がちでスマートフォンを見ている姿すら、注目を浴びてしまっている。
「城ヶ崎くん」
城ヶ崎が顔を上げて優羽を見つける。その嬉しそうな顔は心からのもののように思えた。
「優羽」
とても甘く聞こえる声に優羽はどきっとしてしまう。
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