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「なあ、今日は彼女だって言っただろ。名前で呼べよ。俺、彼女に苗字で呼ばれるのとか、いやなんだけど」
周りが静かなので、城ヶ崎はひそひそと優羽の耳元で囁くようにそんなことを言う。
「まさか、名前を知らないってことはないよな?」
もちろん知っている。
周りのみんながほとんど『昂希』と名前で呼んでいるのだから。
けど、そんなことを言われたことはなくて、ちらっと城ヶ崎の顔を見るとなんだか妙に楽しそうで絶対にからかわれているような気がする。
それに名前を呼べと言われたからといっていきなり呼び捨てできるわけでもない。
「……こ、昂希、くん?」
勇気を出して優羽はそっと呼んでみる。城ヶ崎はふいっと横を向いた。
自分が呼べと言ったくせに。
けど、耳の下の方から首にかけてのすらりとしたラインが赤くなっているように見えたのだ。
自分で言っておいて、まさか照れてる?わけないわよね?
「ん、なんか俺の周りって皆呼び捨てだから、くん付けで呼ばれると、なんか照れる」
「城ヶ崎くんが照れるとかすごく意外」
「優羽、名前」
むぅっとした城ヶ崎が優羽の頬を指でつつく。
「今度から名前で呼ばなかったら優羽からキスしてもらおうかな」
城ヶ崎は本当に優羽をからかったり、いじわるしている時は楽しそうだ。
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