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「本当に……なに言ってるの」
その時恰幅のよい男性が城ヶ崎に声をかけてきたのだ。
「城ヶ崎先生」
「北山先生、お招きありがとうございます。素晴らしいですね、楽しませてもらってます」
さっきから写真のパネルなどほとんど見ていなくて優羽をからかってばかりいたような気がするのだが、城ヶ崎はしれっと外向けの魅力的な笑顔を北山先生と呼んだ男性に向けていた。
男性はにこにこしながら、優羽と城ヶ崎の方に近寄ってくる。
「可愛らしい方とご一緒されていますね」
「僕の彼女です。優羽、こちらは北山先生。大手の弁護士事務所を経営されていて、今回の写真展の主催者なんだ」
この人が城ケ崎の知り合いの主催者ということなのだろう。年齢はだいぶ上の人のように見える。
「吉野と申します。素敵なお写真がいっぱいで癒されます」
展示されていた写真はどれも日常を切り取ったような路地裏の光景だったり、ビルの隙間から見える夕日だったりした。
日常でこんな光景を見たら、きっとふっと癒されるんだろうと優羽は思ったのだ。
素直に感想を告げた優羽は北山に向かって丁寧に頭を下げた。
「とても可愛らしいお嬢さんですね、そうかぁ、だから城ヶ崎先生はあまたの女性にもなびかなかった訳ですね。お付き合いは長いんですか?」
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