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机に腰を掛けて、手に台本を持ち、城ヶ崎は窓の外を見ていた。
「部活、行かなくて平気?」
外を見ていた城ヶ崎がまるで外に出たがっている子供のように見えて、優羽はそう聞いたのだ。
城ヶ崎は驚いたように優羽を見た。
「目的は達成したからな」
淡々と紡ぎ出されたその言葉に優羽はつい聞いてしまった。
「目的?」
端正な顔立ちの城ヶ崎がふっと目を細めると、とても大人びて見える。
「俺に走りの才能なんてないから、もう限界まで鍛えたから目的は達成だよ。県大会入賞が限界なのは分かっていたから。あとは違うことに打ち込む」
そう言う城ヶ崎は晴れ晴れというより淡々となすべきことをした、という感じだった。
「私は、城ヶ崎くんって運動神経よくてすごいなぁって思うわ」
「吉野だっていつも本読んでるだろう。すごいと思うけど?」
「そんなことは……」
優羽は目的なんて、割り切ったことは考えたことがなかった。ただ、読むのが好きなだけ。
「違うことでも城ヶ崎くんはきっと結果を残せる人だと思う。尊敬するな」
やはり学年でもトップクラスの人ともなると言うことが違うのかもしれないと素直に感心し、優羽は返す言葉を失った。
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