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さすがに伝えることはできなくて「童話の原作が意外と残酷な話だったとかはよくあるんじゃないか?」なんて言って誤魔化したのだ。
実際に文化祭のための練習をしながら優羽を護るというその設定の方がずっと良かった。
優羽は真面目で、でも真面目なだけではなくて、いつも穏やかに話ができるところがとてもいい。
そして、むやみに城ケ崎のことを意識していないのも良かった。
『窓際のお姫様』なんて呼ばれていたけれど、彼女は孤高という訳ではなくてむしろ皆に慕われていた。
彼女自身の思慮深さや誰にでも分け隔てなく接する姿が好ましいからだろうと城ヶ崎は思った。
けれど、城ケ崎に告白などする勇気はなくて、特に二人の中は進展することもなく、卒業を迎えた。
──ほのかな恋心を抱いた相手。
それが城ヶ崎にとっての優羽だが、その後城ヶ崎は恋心を抱くような女性と出会わなかったから、それは城ケ崎にとってたった一つの大事な思い出になっていたのだ。
城ケ崎の家は父親が会社を経営している。
会社については優秀な兄が二人いるので「昂希はしたいことをしていい」と昔から言われていた。
一方で、母親の弟である叔父が弁護士法人を経営していて、子供のころから頭の回転が速く弁が立った城ケ崎は叔父に「弁護士に向いているかもな」と言われていたのだ。
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