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「優羽」
そう呼んでみる。
「なぁに?」
緩く首を傾げるのが殺人的に可愛い。
城ヶ崎を殺しにきているんだろうかと思うくらいの可愛さだ。
酔っているのは分かっている。
もちろんそれにつけ込んでいることも理解している。それでも手に入れたいものもある。
「優羽」
返事をしてくれるのが可愛くてその名前を何度も呼んでしまう。
「んー?」
そうして、優羽の細い首に触れ、艶やかで柔らかいカーブを描く頬に触れる。
その手は肩から、ゆっくりと身体をなぞって背中に触れた。
触れているのは服の上からなのに怖いくらいの興奮を覚えて、城ヶ崎は苦笑する。
「うふふっ、くすぐったいよ……」
舌っ足らずな甘い声。計算でされたらそれほど腹が立つこともないのに、優羽のそれはいつまでも何度も聞きたくなる。
いけないなんて百も承知だ。
城ヶ崎は優羽の顔を両手で包み込んで覗き込んだ。
優羽が城ヶ崎をまっすぐにみている。
綺麗な茶色い瞳。
こんなに近くでまっすぐに見たことはない。そしてこんなに近くで見つめ返されたこともない。
ただ分かったのはその薄い色素の瞳に捉えられてしまった、ということだけだ。
「優羽、俺の名前知ってる?」
「知ってるよ。昂希くん。だってみんなはそう呼ぶもの」
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