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外の騒がしさに反して、部屋の中の静かに時間が流れる雰囲気はとても柔らかく感じた。
こうして二人でいる不思議な雰囲気と妙に噛み合って、なんとなく居心地の悪さは感じない。
そもそも優羽は一緒にいる誰かが言葉を発しない静かな中でも過ごせるタイプだ。
城ヶ崎の周りにはいつも人がいて賑やかにしているから、こんな優羽といるのは息が詰まるんじゃないかと思えば、自然にしていて特に苦痛ではないようなのも不思議だった。
なんでもできて、華やかな人。
それだけの印象だったのが、あの少しの時間を過ごしたことで静かにも過ごせる人なのだということを知った。
その時、城ヶ崎が手にしていた台本をパラパラとめくったのだ。
「セリフ、覚えた?」
ストーリーは頭には入っているものの、セリフまではまだ覚えていなかった優羽だ。
「まだ覚えてないの」
「吉野はこのラプンツェルの原作知ってる?」
今回のお芝居はクラスの一人が『ラプンツェル』を題材にオリジナルで脚本を作ったと言っていた。
優羽は読書は好きだったけれど、ラプンツェルの原作は読んだことはなかったので、ふるふるっと首を横に振る。
「城ヶ崎くんは知ってるの?」
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