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そして、着信があり『そっちに向かう』とメッセージがあり『待ってる』という最新のメッセージは15分ほど前だ。
「吉野さん?」
後輩が真っ赤になっている優羽の顔を覗き込んでいた。
いつもふんわりしていて穏やかで、動揺したり揺らぐことのない優羽が真っ赤になるなんてことはない。
「すごく真っ赤ですよ?」
「え? 本当? やだ……」
そんな風に恥じらう様子がとても可愛い。
プライベートではこんなふうに赤くなってしまったり照れてしまうことも当然ながらあるのだと知って、後輩としてはとても親しみが持てる。
そしてエレベーターを降り、外に出るとその顔だちも麗しい城ヶ崎が歩道の柵のところにもたれて待っていたのだ。
「優羽、お疲れ」
「城ヶ崎くん! ごめんなさい、今メッセージを見て」
怒らせたくない。けれど、城ヶ崎はなんでもないことのように緩く笑った。
「うん。既読になっていなかったから、仕事中なんだろうなってのは分かった」
「忙しいんじゃないの?」
「暇ではないな。けど……優羽、言ったよな? 俺は記憶力には自信がある」
にっと笑うその笑顔になぜか優羽は背中が寒くなる。
名前で呼ぶこと。あれはまだ続いているということなのだろうか?
そういえば先日も優羽からのキス云々、というのはうやむやになっていた。
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