6.借りは返してもらう

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「そんなに警戒しなくていいぞ。こんな時間まで頑張っていた優羽へのねぎらいだからな。メッセージにも気づかないくらい夢中になってたんだろ。トラブルか?」 「トラブルとまではいかないんだけど」  優羽は簡単にことの経緯を説明した。 「優羽の言うことが正しい。いろんなことを先送りにしてもろくなことにはならないからな」  まともに回答が返ってくることは予想していなかった。優羽はつい意外そうな顔をしてしまったかもしれない。 「なんだ、その顔は?」 「なんだか意外だわ。じ……昂希くんってもっと効率的なことを好むのかと思っていたから」  思わず城ヶ崎くんと言いかけて、優羽は言い直しておく。 (言い直せたんだから、これはノーカウントよね)  そんな優羽の気持ちを見透かしたかのように一瞬にやりと笑った城ヶ崎は澄まして口を開いた。 「基本的には効率重視だな。でもこの仕事だとロジカルシンキングが重要視されることを学んでからは話をきちんと聞くようにしている」 「ロジカルシンキング……」 「弁護士ってのは持ち込まれた案件を解決に導かないとならない。結構ふんわりした状態のまま案件を持ち込むクライアントもいるんだ」  城ヶ崎は優羽に向かって淡々と説明する。  落ち着いていて、とても穏やかな雰囲気で頼りがいがある。
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