7.気づいた気持ちに

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 部屋の中に入り、リビングのドアを開けると真正面は全面が大きな窓だ。  その窓からは小さく光る地上の明かりが星を撒いたかのようにキラキラと輝いて見える。  広いリビングには大きな黒いソファが置いてあり、ガラス製のローテーブルもモダンなデザインでとてもシンプルで城ヶ崎らしい部屋だった。  ソファの横に城ヶ崎がカバンを置く。そしてソファに座った。  なんとなく居場所がなくて立ち尽くしていた優羽に向かって手を伸ばしてきた。 「そんなところで立っていないでこっちに来れば?」  優羽がそっと近づくと手を取られた。  強く手を引かれると腕の中に倒れこんでしまう。城ヶ崎はそれを悠々と受け止める。  優羽を抱きしめた城ヶ崎はその耳元で囁いた。 「約束、守れるよな? 優羽」  優羽は腕の中から城ヶ崎を見る。  約束を反古にすることなんて絶対に許さないくせに、強い瞳で優羽を射抜くように見てくるくせにそんなことを言う。  絶対に優羽のことをからかって楽しんでいるだけなのだ。  綺麗な顔で微笑むのが、どれだけ城ヶ崎が俺様に振舞ったって、優羽は絶対に嫌いになれなくて悔しい。 「回数を覚えてる?」 「八回。言い直した分はノーカンにしてやるよ」  結構たくさんだった。城ヶ崎は絶対に動揺なんてしない人なのだ。
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