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「優羽、そんな顔をして見られたら我慢できなくなるんだが」
「我慢?」
城ヶ崎の手が肌に触れ、優羽はハッとした。
危うく流されてしまうところだった。城ヶ崎の胸元を優羽は両手でぐっと押す。
この人に愛されたらとても幸せなんだろうということは分かる。
でも気持ちが伴わないことは優羽にはつらいだけだ。優羽は城ヶ崎に好意を持っている。
学生の頃から周りを魅了して止まない人だ。再会してからはなおさらそう思う。
大人としての魅力を身につけていて、その色香にも、振る舞いにも、一緒に時間を過ごす楽しさもとてもかけがえのないものだ。
それでも優羽には、城ヶ崎の気持ちが見えないから時折つらい。
きっとからかっているだけ。こんな人が本気なわけない。
だって『言うことを聞けばリークはしない』というから。
どこまで優羽がついてこられるのか試しているだけなのかもしれない。
「なんだ?」
「もう、止めて」
髪をかきあげた城ヶ崎は優羽がなにを言い出すのかという顔で見ていた。
一緒にいれば楽しい。
胸が高鳴るし、幸せにも思う。
だからこそ、こんな歪んだ関係は良くない。
優羽は強く思った。
──私、城ヶ崎くんが好きだわ。
今度は胸がつかまれるようにぎゅっと痛む。
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