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優羽のことなんて放っておけばいいのに。
そう思いながらも、やはり逆らうことができない。
「でも、迷惑じゃない?」
「こんな時間に女の子一人で放り出すことなんてできないだろう」
城ヶ崎が放り出す訳ではない。優羽が勝手に出ていくだけだ。それでもそんな言い方をする。
いつもそうだった。突き放すようでいて、本当のところは優しい。
優羽も帰るとは言ったものの、タクシーに乗るくらいならこの辺りでホテルを探した方が安いかもしれないとは思っていた。
けれど、こんな城ヶ崎の顔を見ていたらそんなこともできなくなってしまった。
「ありがとう。今日のところは甘えさせてもらってもいい?」
城ヶ崎はあからさまにホッとした様子を見せる。
「ん。とりあえずもう一度上がれ」
そう言って、城ヶ崎は優羽の腕を掴んでいた手を離す。
「指一本触れない」そう言った約束を城ヶ崎は守るようだった。
あんなに強引だったのに
優羽は身体を室内に向ける。
「寝室、使えば? 俺はソファで休む」
城ヶ崎に言われて優羽は首を横に振った。
「私がソファで休むわ。城ヶ崎くんは寝室を使って」
「そんなことできるか」
頑なな顔していたんだろう。そんな優羽の顔を見て城ヶ崎は軽くため息をついた。
「分かった。ブランケットを持ってくる」
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