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クラスメイトの脚本では歌声に惹かれた王子がラプンツェルを塔から救い出し、追ってくる魔女に髪を捕まれ捕らえられそうになる。
それを王子が髪を切って助け、魔女をやっつけ、国に戻って幸せに暮らす、という話なのだ。
確かに原作通りでは学校で上映することなど難しいだろう。
グリム童話はともかくとして、城ヶ崎がそういったことにまで造詣が深いというのは意外でもあり、本が好きな優羽のことを知っていることも意外だった。
原作とは違うけれど『ラプンツェル』はとても好評で、校内の演し物の人気投票では一位になっていた。
それはひとえに城ヶ崎の王子様がカッコよかったからではないかと優羽は今でも思っている。
結局城ヶ崎と静かな時間をすごしたのはその時だけで、それ以降はやはり接点のないまま卒業を迎えたのだ。
ただ、賑やかにも華やかにも、そして静かにも過ごせる城ヶ崎はとても不思議な人だなという印象は優羽の中でずっと残っていた。
昨日、久々に見た城ヶ崎は相変わらず、端正で冴えた雰囲気の持ち主で、大人になった分、色気や自信も身についているようでさらに魅力的になっている気もする。
「急いで来たから暑い」
とか言いながら、シャツの袖をまくってビールを飲んでいた。
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