8.反省はしている

1/12
前へ
/255ページ
次へ

8.反省はしている

「ねえ、優羽、文化祭で演し物(だしもの)やったの覚えてる?」  こくん、と優羽はうなずいた。  それはもちろんだ。それで城ヶ崎のことを知ることができたのだから。穏やかに一緒に過ごした時間は優羽にとってもいい思い出だった。 「あれもね、優羽がヒロインと決まって、昂希は手を回して自分を王子役にしたのよ。他の人にはさせたくなかったんでしょうねぇ」 「そうなの?」  そんなこと知らなかった。城ヶ崎はとても目立つ人だったし、人気者だったから当然のことなんだと思っていた。 「でなきゃ、あの昂希があんな面倒な演し物なんてやるわけがないよ」  早紀はくすくす笑っている。  だって、城ヶ崎は一言だって言わなかった。 「今は弁護士だっけ? 納得だわ。チームワークなんてできる人じゃないもの。優秀だけど、あそこまで飛び抜けちゃうとね」 「だって、城ヶ崎くんはなにも言わないから」 「だから拗らせてんのかなって言ったのよ」 「どうして、言ってくれないんだろう?」  その時は好きだったから、ちょっかいをかけてみたけど、手を出してみたら意外とつまらなかったとか?だとしたらとても悲しい。  何かを感じるのに、それが掴めなくて、何か分からなくて優羽はとてももどかしい気持ちになった。  食事はとても美味しいはずなのに妙に味気がない。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21196人が本棚に入れています
本棚に追加