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8.反省はしている
「ねえ、優羽、文化祭で演し物やったの覚えてる?」
こくん、と優羽はうなずいた。
それはもちろんだ。それで城ヶ崎のことを知ることができたのだから。穏やかに一緒に過ごした時間は優羽にとってもいい思い出だった。
「あれもね、優羽がヒロインと決まって、昂希は手を回して自分を王子役にしたのよ。他の人にはさせたくなかったんでしょうねぇ」
「そうなの?」
そんなこと知らなかった。城ヶ崎はとても目立つ人だったし、人気者だったから当然のことなんだと思っていた。
「でなきゃ、あの昂希があんな面倒な演し物なんてやるわけがないよ」
早紀はくすくす笑っている。
だって、城ヶ崎は一言だって言わなかった。
「今は弁護士だっけ? 納得だわ。チームワークなんてできる人じゃないもの。優秀だけど、あそこまで飛び抜けちゃうとね」
「だって、城ヶ崎くんはなにも言わないから」
「だから拗らせてんのかなって言ったのよ」
「どうして、言ってくれないんだろう?」
その時は好きだったから、ちょっかいをかけてみたけど、手を出してみたら意外とつまらなかったとか?だとしたらとても悲しい。
何かを感じるのに、それが掴めなくて、何か分からなくて優羽はとてももどかしい気持ちになった。
食事はとても美味しいはずなのに妙に味気がない。
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