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このやり取りについてさっき考えていたところだ。思わず笑いそうになりながら、いつかと同じように優羽は返す。
「詐欺なの?」
『詐欺ならどうする?』
面白がる響きの声に逆に優羽は安心してしまった。なにか気の利いた返事をしたいと思っていたら受話器から低い声が聞こえてきた。
先ほどとは全く違う真面目な声だ。
『優羽、話がある』
「うん」
優羽も話がある。
『このまま電話でも話せるけど、直接会って話したい』
「そうね」
なんだか胸がぎゅっとした。優羽も話をするなら直接顔を合わせて話したいと思ったから。
『二人きりになるのが嫌なら、外でもいい』
今まであんなに強引だったのに、城ヶ崎が優羽に気を遣ってくれているということが分かった。
「話しましょう」
聞くと城ケ崎は車だというので、優羽はマンションの前にある公園を指定した。
家に帰ってリラックスウェアに着替えていたけれど、もう一度ブラウスとスカートに着替え、公園の入り口までいった。
程なくして、城ヶ崎のらしき車が公園の前に停まる。
助手席の窓が開いた。運転席側から城ヶ崎が身をのりだして声をかけてくる。
「入れば」
「うん」
優羽はドアを開けて、車の中に入った。
革張りのシートと真っ黒な内装は城ヶ崎らしかった。
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