リアリティ アーバンレジェント

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 15年前くらいから噂にはなっていた。実は政府が変異率の高いウイルスから国民を守るという名目で半義務化した無償ワクチンが特殊能力に開花させる人体実験であったというもの。遠隔操作で発現しないようにしているが既に9割の人間に能力が宿っているという。  嘘か真か、時折騒がれては半信半疑で下火になる。それがずっと繰り返されていた。そのまま都市伝説で終わると思っていたのに、緊急記者会見が開かれた。テレビ、ラジオ、街頭テレビ、インターネット、カーナビまで乗っ取られ……ありとあらゆる媒体に真面目くさった初老の首相が映り、短く告げた。  「以前より話に出ていた無償ワクチンに対する噂は事実です。人類を新たなステージに移すためのものであったことを認め、来たる建国記念の日、正午に国民の能力を解禁することを宣言します」  突然のことに超能力に憧れていた者は興奮し、信じられない者は眉間に皺を寄せ、政府の横暴と騒ぐ者とそれぞれ何らかの反応をする。もっと詳しい情報をとメディアが騒ぐ様子も見られた。  会見発表は示された日の僅か2日前。何をするにもあまりに時間がない。言うべきことは言ったと沈黙する政府から新たな情報をを得ることはできず憶測だけが飛び交う。そして、20〷年2月11日、正午まであと5分。  また首相がありとあらゆる媒体に顔を出した。時計の針が重なる瞬間、無表情に首相が告げる。  「能力解禁です」  ぞわりと、体の中で何かがうごめく。問答無用で何かが目覚めようとしていた。  「ああ、僕らはもう昨日には戻れないんだ」
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