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12月2日
Q.性格悪い美人と、性格いいブスと、どっちがいい?
「そんな質問しない人」
「俺にとっては!一大事なんですう!!」
くだらないことで教室中の視線を集めてしまった。つらい。
ついでに、他人の机を叩くんじゃねえ。そして痛がるな。自業自得だろ。
「保健室行った時に帆坂と会ったんだけど、色白で可愛かったんだよ。でも挨拶返してくれなくて、感じ悪くてさ」
「ふうん」
隣の席―教壇の目の前の空席―に目をやる。横には、何も掛けられていない。持ち主は、GW明けから教室に来ていないのだ。
「委員長ってさ、面倒見いいし、誰にでも優しいじゃん?」
「委員長だからな」
廊下に目をやると、ノートを抱えて歩いていた。隣で談笑しているのは、今日の日直だ。2人って、仲良かったっけ?
「どっちがタイプ?」
「2人ともお前なんかにキョーミねえから、安心しろ」
「そんな夢のないこと...」
夢のないこと、ねえ。
保健室のドアをノックする。
「どうぞ」
室内からの返事は、先生のものではなかった。
おそるおそるドアを引くと、薬の臭いが襲ってきた。独特の臭いと緊張感に、自分が染まることはないだろう。
「プリント」
ベッドに腰掛けていたのは、女子生徒だった。
「どうも」
受け取ったプリントは、学校指定の連絡袋に収められる。
明らかな深爪だが、薄いピンクは白い手に花を添えている。伏された目元は睫毛で濃い影ができていて、眉でまっすぐ切り揃えた前髪と、胸の位置で揃った毛先には艶があって、制服を着ていると烏みたいだ。
美人、ねえ。
友人が言うように、委員長より帆坂の方が万人受けするルックスに近い気がする。
「じゃあ」
「...ああ、また明日」
学校指定の通学リュックは、振り返ることなく保健室を後にする。自分も早く戻らないと、帰りのHRに間に合わない。
どうして教室に来ないの?明日は来れそう?
気にならないこともないが、地雷になることくらいは予測できる。
ほんとは知ってるくせにと、嫌らしく嗤われた。
心当たりがない、わけじゃない。
保健室に登校してくる女子生徒の連絡係を、隣席の男子生徒に命じたのは、クラス担任なのだ。
うちのクラスには、「面倒見がよく、誰にでも優しい」女子の委員長がいるというのに。
「ま、どうでもいいけど」
美人証明の日
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