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12月4日
けたたましく朝を告げる目覚まし時計にチョップをお見舞いし、布団に潜る。
なんて寒い朝なんだ。
平日なら眠気が誘ってくるのに、日曜の今日は意識が覚醒していく。
悲しい話だ。
次第に音が気になってくる。車が走る音。遠くで子どものはしゃぐ声がした。包丁で何かを刻む音。奥で、洗濯機が回っている。
諦めて布団を蹴飛ばすと、香ばしい香りが漂ってきた。魚だ。魚を焼いている。
誘われるまま部屋から出る。キンと冷えた床が、裸足を刺してくる。
「おはよう」
「おはよ」
それでもリビングに入ると、数時間前から働いていた暖房器具のおかげでいくらか温まる。ベランダから差してくる光が、優しい。
「よく眠れた?」
「まあね」
カーテンを開けると、柔らかかった日光が鋭くなる。目を細めると、窓の向こうに一昨夜身につけていたパジャマが干されていた。
「朝、食べる?」
時間的には、朝と昼を食べ分けられる。よかった、目が覚めて。
「うん」
出てきたのは、和食の朝食。味噌汁がほかほかと湯気を立てている。
「いただきます」
仕事で忙しい朝はパンを焼くだけになるが、時間のある時は和食のセットになる。
幸せな話だ。
上手になったよな、などと上から目線なことを考える。包丁が刻むリズムもそうだし、魚の焼き加減、味噌汁の濃さにも迷いがない。
料理が上手な女の子はそれだけでポイントが高いけど、上達していく様子を見守るのもまた一興。だって、自分のために努力してくれてるって分かるから。
「美味しいね、今日の味噌汁」
「ほんと?」
「うん」
豆腐の大きさもちょうどいいし、玉葱の食感も楽しい。
「毎日食べたいくらい」
「えっ」
「えっ」
褒めたつもりだったが、毎日というのはプレッシャーだったか。ねだったつもりは、微塵もないのだが。
「ああー…」
そういう…と、彼女は呆れたように笑った。
「毎日は無理。そんなヒマない」
「…ですよね」
しかし、なぜか翌朝からは毎日味噌汁が出るようになった。
「今日パンだろ?無理しなくていいよ」
「…はいはい」
⁇??
プロポーズで愛溢れる未来を創る日
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