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12月6日
それでと、平坦な調子で続きを促された。
視線は一度も本から逸らされていないし、もうちょっと興味持ってくれても良くない?と思う。
いや。相槌のタイミングは合っていたし、適当でも受け答えをしてくれているから、よしとするか。
話の内容的に。
「ひどいと思わない?」
「どこが」
本を閉じてまっすぐ見つめられると、返答に困る。
ぐうの音も出ぬ俺を彼女は笑うことはせず、小さくブランコを揺らした。
全てお見通しだと言いたげに。
「で?姉ちゃんを彼氏に取られたのが悔しいの?」
「ちがう!話聞いてた!?」
俺が言いたかったのは。
「普段はいちばん大きなハンバーグを出してもらってたのに、彼氏がきたら二番目になってた...。なんて、客人を優先するのは当然でしょ」
「そんなのわかってる!」
頭では。
「自分が1番じゃないと納得できないなんて、ほんと末っ子」
「......」
もう小学生でもないし、客の前で感情のまま騒ぐわけにもいかなかった。
同性の友人には馬鹿にされそうだったので、いちばん信頼している異性に愚痴を吐いた。
ストレートな物言いも想定内だが、改めて言葉にされると恥ずかしい。
「それで?姉ちゃんの彼氏ってどうだったの?ヤなやつだった?」
「なんでヤなやつ前提なの!」
「違うの?」
「わかんない。喋ってないから」
「ふうん」
呼びつけといてそれかよ。本音が透けて見える。
勝手な都合で呼びつけられて愚痴を聞かされるわけだから、当然だ。
冷静になってきたのか、頭が回ってきた。
「なになに。そういうの、気になっちゃうカンジ?」
小学生の時に彼女が転校してきてからの仲だ。中学はほとんど小学校の持ち上がりなので、幼馴染もクソもない。
男女問わず友達は多い方だが、2人で会うのはこの子だけだ。
質問を呑み込むように、まばたきが繰り返される。
ふざけたようにみせかけたやり取りでも真剣に取り合ってくれるのが、彼女のいいところだ。
他のやつには面白味がないと思われているのか、友達は少ないみたいだけど。
「...別に」
ブランコの揺れが大きく、速くなっていく。
髪が邪魔で、表情はわからなかった。
姉の日
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