最後はやっぱり迷うよね

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 最後はやっぱり迷うよね

ちょっとね、予想外に体調を崩し、今後ずーっと厳しい食事制限をしていかないといけなくなったの。 医者も親身になって状態を説明してくれるし、そりゃあ、本当に残念だけど自分の体だからね。医者の言う通りに自分で管理していかないと誰も24時間毎日管理し続けてくれる訳でもない。いや、例えやってくれたとしても逆にストレスになってやられてしまいそう。 まあ、そういうことで、簡単に言えば精進料理みたいな質素な食生活をやりなさいと。 特に、ラーメンやハンバーガー、お菓子などは絶対に御法度となった。 体に悪いのは想像つくけど、体に悪いものって特に美味しいのよね。 だけど、折角のこのタイミング。これを逃せばこれまでの長い長い生活習慣を変えることなど無理であろう。 そう強く決意した結果、今日が最後のラーメンの日となった。 迷いに迷った。最後のラーメンにどれを食べるかなかなか決めることが出来なかった。たかがラーメンなのだから、ぱっとラーメン屋に行けば良さそうなんだけど、選んだものは不思議と袋ラーメンなのであった。 それも味噌ラーメン。塩も豚骨も捨てがたかったが、そこは昔ながらの味噌が懐かしさというか、田舎っぽくて何となく精進料理に近そうな雰囲気ということでこれに決まった。何気に足掻いてる自分の気持ちにもそれとなく便乗してしまったという理由もあるのだが。 幸いにもラーメン等のストックは全く無かった。 だったら早速買いに行かねば。 袋ラーメンは一袋から売ってるからね。一つだけ買うのは容易である。 近所のいつも行くスーパーで購入してきた。何を入れようかと考えて、煮卵とモヤシと海苔と蟹カマボコ、チャーシューも一緒に買ってきた。 最後のラーメンとしてはこれで良かろう。モヤシはさっと炒めて塩コショウで軽く味を付けた。 さて、完成。 さあ、これが人生最後のラーメンだ。しっかりと味わいながら食せねば。 何故だろう。途中から涙が溢れて止まらなくなった。 ティッシュで拭いても拭いても止まる気配などしない。 思いっきりズルーズルーと音をたてて面を吸い上げる。 やっぱり、美味しいわ···· 食べ終わったどんぶりの底をじっと見つめた。 これで終わったけど、これからが本番の始まり。 頑張りまーす! 私はどんぶりとお箸を持って流し台に行くと、軽やかに洗った。そして、いつも使わない流し台上の棚の奥の奥にそっと仕舞った。
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