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私の初恋は保育園の時
相手は同い年の葵くん
目が程よくぱっちりしていて、
聡明で、優しくて、
どちらかというと
色白のほうかな、
分かりやすく言うと
クラスで3番目くらいに
モテるような雰囲気だったかなぁ。
私といえば地味で
目立たない子だったけど、
一つだけ得意なことは
手先が器用なこと。
保育園の休み時間になると、
友達が何人も自分の粘土を持って
私の前に並ぶの!
結衣ちゃん、
これでケーキ作ってとか、
お花作ってとか言ってね。
でも葵くんだけは
1度も並んでくれなかったんだよね。
背の順は2人とも当時は前から4番目
誕生日は私が5月、
葵くんは6月で男女別でそれぞれ3番目
どっちの順で並んでも
お隣同士なのだ。
お弁当を食べるのも隣同士
お遊戯するのも隣同士
工作も隣同士
お昼寝も隣同士
だから自然と仲良くなって
一緒にいるのが普通になって
当時は初恋とかよく分からないけど
好きだったんだと思う。
無邪気で純粋で
穏やかな時が流れて
そして小学生になった。
私の小学校は1学年が6クラスもあって離れ離れになる確率は
かなり高かった!
でも同じクラスになった。
やった!また毎日葵くんに会える。
そしてまた席もお隣同士だね。
楽しい毎日が始まった。
私の小学校は2学年ごとに
クラス替えがあった。
だから2年ごとに
ドキドキするんだけど、
3年生の時も5年生の時も
同じクラス!
6クラスもあるのにずっと一緒、
ずっと仲良し、
学校で一緒に勉強して、
放課後一緒に遊んで、
とにかく一緒にいる事が
当たり前だった。
6年生くらいになると
女の子の間で好きな人の
名字と自分の名前をくっつけて、
ただ紙に書く遊びが流行った。
遊びといっても人には見せられない、それぞれ紙に書くけど
「見せてー、ダメー。」みたいな!
でもその紙を1人で見ては
ニヤつくという
なんともシュールな遊び!
もちろん私の紙に書いてある名前は
葵くんの名字!
もう恥ずかしい。恥ずかしいから、
誰にも教えませんから。
葵くんが好きという気持ちは
ずっと隠したままだった。
そんなこんなでいよいよ中学生
私の学校は何と主に3つの小学校からの生徒が集まってしまう、
市内でも1番のマンモス校だ。
1学年12クラスもある!
これは終わった。完全に無理。
一緒のクラスになるなんて無理と
思っていた。
ドキドキのクラス発表。
葵くん、葵くん、あった!7組
同じだー!どういう事!?
これは、もはやさすがに
運命なのかなぁなんて
勝手に盛り上がる。
クラスの中の3分の2は
知らない子のなか、
またまた私の隣の席には葵くん。
中学生になると
中間テストや期末テストも始まった。
葵くんとはテストの点数も学年順位も教え合うくらいの仲良しだった。
ちなみに葵くんは
514人中10番台(頭良い!)
私は50番台(そこそこ!?)だったな。
2学期になると
他の小学校から来た子達も
すっかり仲良くなってきた。
中学生といえば
何ちゃんは誰が好きなの〜
攻撃が盛んになってきた。
怖い怖い、
私は何とか攻撃をかいくぐって
きたけど、
聞いてないのに教えてくれる子が
多いこと多いこと。
それが聞き捨てならないぞ、
何と葵くんが好きだという子が
クラスのなかだけで8人も
居ることが判明。
いやいや保育園の時は3番目くらいの
モテ指数だったのに、
いつの間にかトップ?
位まで上り詰めてる。
確かに学級委員長やってたり、
頭も良いし性格も良いし
ダンスも上手くて
クラスで目立ってた。
葵くん遠くに行かないで!
なんて言っても無理だよね。
そして運命の2月、バレンタインデー。
私は人生初の本命チョコ!
買いましたよ!
でも想いが、強すぎて
大きめのチョコレートを
買ってしまった。これが大失敗。
一応お菓子は学校に持ってきては
いけない校則だから、
どこかにそーっと
しのばせないといけないのに、
わたしのチョコ厚みがありすぎる。
机の中に入れたかったけど入らない。下駄箱は
丸見えになっちゃうからだめ。
葵くんのカバンに入れようと思って、葵くんの部活、テニス部のみんなが
カバンを置いてある
渡り廊下に行ってみた!
ダメだー、カバンって学校指定、
全員おなじカバンで
誰のカバンか分からない。
本当にマヌケな私。
手渡しする勇気もなく、
チョコはお持ち帰り。
告白のチャンスを逃した。
2月15日クラス1の美少女、
香澄ちゃんが、
葵くんにチョコを渡したらしいと、
噂になってた。
これは勝ち目は無い
チョコを、渡せなかったショックと
香澄ちゃんショックで、
立ち直れない。
3月15日、ホワイトデーの翌日
香澄ちゃんが葵くんから
バレンタインのお返しを
もらったらしい、
それがお煎餅だったらしい。
えっお返しがお煎餅?
キャンディとかチョコ
とかじゃないの?お煎餅?
うーんどういうこと?
謎だらけだけど
誰にも何も聞けないままだった。
そして中学2年生、クラス替えだ。
10年ほぼ毎日一緒にいた葵くん
運命だと勝手に思っていたけれど…
私は3組
葵くんは10組
おまけに校舎まで
別々になってしまった。
運命なんかじゃなかった。
まるで失恋したように落ち込んで
家に帰って泣いた。
中学2年、3年生の記憶はあまりない
葵くんに、会えない毎日は
とてもつまらなかった。
卒業式の日、
葵くんを、見かけた。
誰かに手紙を渡されてた。
ラブレターかな?
相変わらずモテてるみたい。
横目で見ながら、帰宅した。
卒業アルバムの葵くんの写真を見た。なんだか表情が暗い。
私の知ってる葵くんじゃないな。
2年間何があったのかな?
知る由もなく
別々の高校に進学した。
高校の3年間もあっという間に過ぎた。
その後、私は大学に行って、
銀行に就職していた。
葵くんの事は何も知らなかった。
何で、誰も同窓会とかしてくれない?
1学年500人以上も居ると、
同級生でも知らない人多いし、
集まるキャパもなかなか無いか。
私は毎日仕事でいっぱいいっぱい。
銀行って本当に忙しくて、
恋する余裕も無いし、
そもそも好きな人すら出来ない。
あっ、でも好きですって
言ってくれた人は居たなぁ。
でもびっくりしただけで、
いえいえ私なんて
めっそうもございません。
って断ってしまった。
どうするの私、
このまま仕事だけして
どんどん歳を取っていくの?
もう今年24歳なんだけど。
とぼとぼと駅から家に帰る途中、
うーん見覚えのある顔が、
あっ葵くんのお父様だ。
「おじさん!お久しぶりです。
葵くんの同級生の結衣です!」
「結衣ちゃん、久しぶりだねえ、
元気だった?」
「はい!何とかやってます。
葵くんお元気ですか?」
「まあねぇ、ぼちぼちかねえ。」
小学生の時、
運動会で家族ぐるみで
お弁当を食べて依頼、
本当に久しぶりで、
懐かしくて嬉しくて、
私はテンションが上がりまくりで
話が盛り上がってしまった。
そして気がついた時には
思わぬ事を口走っていたのだ!
「おじさん!実は私、
葵くんが初恋の人なんです。」
なぬ〜、いやいや私どうした!
こんなところで初恋解禁?
もしも〜し、きみきみ!
間違ってるから!
解禁場所どう考えても違うから!
おじさん、少しびっくりしてたけど、ニコニコして聞いてくれた。
「当時恥ずかしくて、
どうしても言えなくて!
でももう時効ですよね!
ハハハハハー、」
「結衣ちゃんなら大歓迎だったのに」
「いやいや、
おじさんったらまたまたぁ」
なんて笑いながら別れた。
なんかスッキリ!たぶん、
いや絶対間違ってるけど、
スッキリして家に帰った。
まあねぇ、中学卒業してから10年間、
1度も会えなかったわけだし、
これから会うことも無いし、
運命でもないし、まぁいいでしょう。自分に言い聞かせた。
そんな事があってから2週間後、
家のチャイムが鳴った。
「はーい、インターホンを覗くと
立っていたのは葵くん」
えっ、何事!
どうしよう、服ジャージだし、
メイクしてないし、
コンタクトもしてなくて、
メガネだし。
でも待たせてもダメだし。
「少しお待ちください」
せめて普段着だ!
ジャージから普段着に速攻変えて、
コンタクトは時間かかるから却下、
ほぼすっぴんだけど仕方ない。
「お、お久しぶりです。こんにちは」
「結衣ちゃん、久しぶり、
ちょっとさ今時間ある?」
「あっ大丈夫だよ。」
すると、突然、目の前に花束が!
「僕と、結婚を前提に
付き合って下さい。」
「えっ」
「親父から、結衣ちゃんの話聞いてさ、俺、やっと勇気が出たというか、
俺も結衣ちゃんが初恋の人なんだ。
そしてずっと忘れられなかった。」
嬉しさで、涙が溢れ出る。
メガネのレンズが曇っちゃった。
葵くんが見えない。
その瞬間ふわっと抱きしめられた。
「ごめん、
長い間待たせてしまって。」
「ううん、いいの、大丈夫。」
「それで返事は?」
「よ、よろしくお願いします。」
こうして、私の初恋は、
実を結びました。
人生でたったひとりの人しか
好きにならないなんてこと、
あるんだね!
それもお互いにね!
本当に奇跡だね!
会ったのは、10年ぶりなのに、
話が途切れなかった。
葵くんにずっと聞きたかった事を
聞いてみた。
「保育園の時、葵くんにも、
粘土で何か
作ってあげたかったんだけど、
1度も声かけてくれなくて、
ちょっと寂しかったんだよね。」
「うーん覚えてる。
結衣ちゃんすごい人気でさ!
俺、子どもながらに
嫉妬してたんだと思う。
すごく作って欲しかったけど、
その他大勢の中に
埋もれちゃいそうで、
その時から結衣ちゃんの
特別で居たかったんだよなぁ。
ガキのクセにね。」
「何、何、嬉しいんだけど!
これからは、
何でも作ってあげちゃおうかなぁ!」
「やばい嬉しい、よろしく!」
「OK!それはそうとさ!
中1の時バレンタインデーに香澄ちゃんにチョコ貰ってたよね。」
「ああ、きちんと、
お煎餅返したよ。」
「だから、意味が分からないの。
お煎餅って珍しいよね。」
「お煎餅はね、特に意味はないという意味なんだよ。」
「はっ?」
「だから、気持ちはありがたいけど
僕は君の事、
どうとも思っていませんよ
という意味。」
「そうだったんだ。
両思いになったのかと思ってた。」
「違うよ。安心した?」
「うん。」
「バレンタインの日といえば、
結衣ちゃん、テニス部の荷物置き場ですごい怪しい動きしてたよね、
あれ、何してたの?」
「まずい、見られてたの?
あー実は葵くんにチョコをあげたくて持っていったんだけど、
カバンがみんな同じで
葵くんのカバンがどれか
分からなくてね、
諦めて持って帰ったんだ。」
「うわっ、それ食べたかったなぁ。
その事実早く知りたかった。」
「ごめん、本当にマヌケで。」
「いや、ちょっとぬけてるところが、結衣ちゃんの、
かわいいところだから!」
「あ、ありがとう。」
「俺も聞きたいことある。
葵ちゃん、中3の時、
真山と、すごい仲良くしてるって
聞いてたんだけど」
「あー、真山くんね、懐かしい。
えっでも仲良くしてた
覚えはないけど、
そういえば真山くん、
何だか毎日シャーペンを忘れてね、
私に借りに来てたのは覚えてる。
それだけだよ!」
「それさ、クラスのほとんどが
気がついてたらしいよ!
真山が結衣ちゃんに気があるって」
「うそ!私全く気が付かなかった。
ていうか、葵くんすごいリサーチしてる!」
「そりゃあさ、気になるからさ!
部活が一緒だった丸山も居たし、
色々教えてくれたし」
「へ〜私の事気にしてくれてたなんて、本当に1ミリも知らなかった」
「結衣ちゃんってさ、
本当に鈍感だよね。
いつもホワホワしてるし、
でもそのおかげで今があるから、
結果オーライだけどね。」
「私だって
まだ聞きたいことあるから!
卒業文集の写真、葵くん、
表情暗くない?」
「あー、そうだね、だって結衣ちゃんとクラス離れちゃったからさ、
まあ悟ってよ。」
「そ、そうだったんだ。じゃあ、
最後にもうひとつ。
卒業式の日、
ラブレター貰ってたよね。」
「あ〜、たくさん人が居るのに
恥ずかしかった。
結衣ちゃん横通り過ぎたじゃん!
おおー無視かよーって思ってたよ。」
「ダメでしょ、人がラブレター貰ってるところ話しかけられないから!」
「内心、結衣ちゃん助けてと思ってたんだけどね。」
「無理無理、分からないから。
それで、どうしたのその後。」
「僕、他に好きな子居るからって断ったよ。」
「そうだったんだ!えっその好きな子って誰?」
「それ今聞く?」
「聞く聞くぅ!」
「うーん誰だっけなぁ」
「うわぁー意地悪い!」
がばっと抱きしめられた!
「結衣ちゃんだよ!」
「う、うん」
「結衣、これからは聞きたいことがあったらその場で聞いて!
俺も聞くようにする。
言いたいことも飲み込まないで、
お互い4歳の頃から知ってるんだよ、
遠慮はなし、
何があっても結衣のこと嫌いになんかならないし、どこにも行かないし、
ずっとそばに居るから。」
「わかった。ありがとう。
葵くん、大好き。」
「結衣、愛してる。」
10年越しの謎が解けて、
将来の約束も出来ました。
そして葵くんのお父様!
おじさんに感謝です。
葵くんと私の初恋と、
最後の恋のお話でした。
おわり
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