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ありがとうございました、と深く頭を下げる伊藤さん、また、それに続くメンバーを見送り、ふぅ、と海遊はため息を吐く。白い息が東京の暗がりへと消えていく。知らないあいだに季節は流れていく。知らないあいだに自分も年を取り、……ずっとひとり……。
とてつもない怖気が海遊を襲った。……わたし、ずっと、このまま……ひとりで生きていくの?
会社にも独身の先輩はいる。四十代五十代以上でも肩を切ってオフィス街をパンプスの踵を鳴らして歩くような立派な先輩たち。……でも、先輩たちには、友達。飲み友達がいたりして、休日を孤独に過ごしたりなどしない。そういったあったかい場所があること自体が海遊には羨ましかった。
海遊は大学進学のために上京したので、大学の友達はいるが、結婚就職などで全国に別れ、結果、音信不通状態だ。会社では。こころを開くことはないので友達も出来ず、それに、同期の女の子たちはみな結婚で退職するか、あるいは転職するかで、同性の同期はすでにいない。自分の下の世代の女の子たちがいつもジャニーズの話を楽し気に話しているのを切ないような目で海遊は見守っている。……わたしにも、友達とか……。
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