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うっとりと語る糸原を前に呆然とする一同。糸原は、仕事中は完全ポーカーフェイスで、なにをしても笑わないゆえに、『氷の帝王』の異名を持つ。そんな男が、こんな隠し持った顔を持つだなんて誰が予想出来ようか。糸原といえば、陶酔のあまり、天井、いや、空間の一点をぼうっと見つめ、「……絶対……似合うと思うんだよなぁ……その髪質を活かしておさげ……ポニテ……三つ編み編み込み……ああ。ぱっつんボブカットも似合うに違いない……ハーフアップでゆるっとStudio CLIP……いや、サマンサモスモス……あたり着せたら超絶可愛い……ああ……ガーリーなスタイルも超絶似合うはず……夏なんかは麦わら帽子……いまだとバケハ……」
すっかり自分の世界に溶け込んだ糸原を前にし、どこから突っ込んだらいいか分からない。海遊は、信じられない気持ちだった。ずっとずっと――劣等感を抱いていたこの髪質。髪型に、まさか……陶酔する男がいるだなんて。思いもしなかったのだ。
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