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だから、海遊は、自分の髪について突っ込んでくるひとは敵だと結論している。よって年明けから中途入社で入ってきた上司、糸原氷雪についても、【最悪な上司】というラベルが貼られた。これ以上はなにも言うまい。海遊は、こころのシャッターを閉ざした。
「乾かしてません。いつも適当です。……糸原さんは今後一切わたしに仕事以外で話しかけないでください」
「ちょ。待てよおま……」
上司がなにか言いかけたが知ったことではない。以降も、ひたすら、海遊は、糸原を無視し続けた。
* * *
「……鷺沼さーん。帳票の承認お願いします。……あと、鷺沼さん」
昨年の四月に入社した初々しい新人、神尾勇人。最初は空気の読めない新人だったのが、立派な社会人へと成長しているのを感じる。と海遊が認識するとほぼ同時に、神尾は整った顔を海遊に近づけると長身を屈めて声を潜め、「糸原さんとなんかあったんすか? ずっと糸原さん話したそうにしてるのに無視すんの、……社会人としてどうなんすか?」
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