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はあ、と大きく神尾が息をした。頼もしい……と感じるのはこんな瞬間だ。「ビジュアルを悪く言われるのって立派なパワハラです。よし。鷺沼さんが言えないんだったらおれが――」
「だーからもう」もはや、海遊は立ち上がり、神尾の行く手を塞いだ。手を広げ、「神尾くんが下手なことをするとかえってわたしが傷つくの。……もう。触れないで」
言い過ぎたか。と、神尾の、殊勝な表情を見ていて思う。飼い主に邪険にされた……ワンコみたいだ。
わん、とこころのなかで海遊は言いかけたがいいや、と戒め、言い過ぎたねごめん、と頭を下げた。
「とにかく。……これはわたしと彼の問題で。別に、仕事に支障をきたしているわけでもなんでもないから……わたしの気持ちの整理がつくまで、放っておいて」
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