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海遊はふと彼氏の元を尋ねた。そのときに――彼氏の浮気が発覚した。本来なら海遊がいるはずの寝室で、元彼氏が、浮気相手に囁いていたことがいまだ――海遊を蝕んでいる。
「――鷺沼さんも、お世話になりました」
はっとした。派遣さんが目の前まで来ていた。海遊も頭を下げ返す。「いいえ。伊藤さん、元気な赤ちゃんを産んでくださいね」
伊藤さんは涙ぐんでいた。「……はい。ありがとうございます……」
素直に祝福の言葉を出来るくらいに、自分は、成長したのだ。海遊は、前向きに受け止めていた。……にしても。
「……神尾くん。おっそいなぁ……」神尾は会計役をしていてこの場を仕切る係なのに。仕方がないから、海遊が仕切ってやる。どうしたものかと店の前で突っ立ったままの皆の前で、目立つようにぱんぱんと手を叩き、「……はい。みなさん、お疲れ様でした。送別会はこれでお開きです。寒いので、お気をつけてお帰りください。……伊藤さん。お幸せに」
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