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友釣りが主だと思われている鮎釣りだが、実際は餌釣りやルアー釣りなど様々なスタイルがある。
男が言う『あや』という魚は鮎の突然変異種だそうで(本人はそう言っている)同じようにやるといい、と言った。
男はちら、と夕陽に目を向けると
「もう少しかな」と呟いてバックパックからスケッチブック大の小型テーブルやら、バーナー付きの簡易クッカー、まな板と調理ナイフ等を取り出して並べ始めた。
ここで野営でもするつもりなのか?
質問しようかと二十代後半か三十歳前半くらいだろう男の横顔を伺う。
ここに到着してから先程までの饒舌さは消え、驚くほど無口だ。
僕は自分の荷物から取り出した竿、リール、ルアーを組み立てると、振りかぶって水面に仕掛けを投じた。
リールを巻き取りつつ、水中のアタリを取る。
男は腰掛けたまま、黙って僕を見ている。
釣らないんだろうか?てっきり地元の釣り人だと思っていたのだが。
じっと動かぬ男を尻目に、僕は竿を微妙に揺する。
コツを教えてくれたのは誰だったっけ
確か社会人になって最初に付き合った女性
夜釣りが趣味で、よく連れ出されたな
そのまま車中泊で朝まで抱き合って
赤いライフジャケットが似合うひとだった
あの川の色のような
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