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男は手づかみにした、それを口元に押し込むと
ばり、と噛みしだいた。
ピチピチ、と尾びれが踊る。
ばり、ばり、という音と共に男の口に収まっていき、最後にちゅぽん、と吸い込まれる。
男は、げっぷを漏らすと
「お行儀悪くてゴメンな。一年ぶりの飯でさ…。我慢できなかったんだ」
ショウスケ
ちゃぷり、という音と共に別の顔が男の横に浮かんだ。
「お。二番目の女房だ。よしよし、元気だったか?お前は塩焼きにしてやろうな。ん?何だ?」
アイシテル
女の唇から声がした。
陸に揚げられた魚がそうする様に、パクパクと開閉するその口から。
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