あや

7/10
前へ
/10ページ
次へ
男は手づかみにした、それを口元に押し込むと ばり、と噛みしだいた。 ピチピチ、と尾びれが踊る。 ばり、ばり、という音と共に男の口に収まっていき、最後にちゅぽん、と吸い込まれる。 男は、げっぷを漏らすと 「お行儀悪くてゴメンな。一年ぶりの飯でさ…。我慢できなかったんだ」 ショウスケ ちゃぷり、という音と共に別の顔が男の横に浮かんだ。 「お。二番目の女房だ。よしよし、元気だったか?お前は塩焼きにしてやろうな。ん?何だ?」 アイシテル 女の唇から声がした。 陸に揚げられた魚がそうする様に、パクパクと開閉するその口から。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加