あや

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ホウ、ホウ、という声に気づいて目を覚ました。 フロントガラスごしの、あたりはすっかり日が落ちている。 夢? 「夢じゃないぜ」 車の運転席で飛び上がる。 隣の助手席には男がいた。 「ここまで連れてくるの大変だったぜ。ま、駄賃も貰ったからよしにしてやるよ。お前さんの取り分は、ほれ、後ろ」 親指で後部座席を指す。 深緑色の地味なクーラーボックス。 中から タケシ アイシテル 前の彼女の声がした。 「綾香…」 「へえ、アヤカって言うのか。変な符号だな。殺めた女の魚だから『アヤ』って呼ぶんだアレの事」 「…」 「お造り…ああ、刺し身にしといたぜ、尾頭付きで。おふくろさんは、あんまり身が無くってな。まあ、鮮度の良いほうがいいだろ」 男はドアを開くと助手席を降りた。 「また来年会おうや」 男は帽子を取って挨拶をする。 月明かりに光る魚の様な目だった。 そのまま闇に消えた。
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