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2020年6月
📱6月7日の午後5時頃、黒狼村の山林近くでドライブ中の夫婦が崖下に落とされている女性の遺体計3体を発見し警察に通報。被害者は飲食店従業員の 時岡貴子(48歳)、主婦の 黒木麻紀(50歳)、会社員 の野崎友香(37歳)と判明。殺害された日は、貴子が6月1日、麻紀が6月2日で、友香は6月3日とみられている。被害者の物と思われる遺留品が遺体発見現場の周囲2キロ圏内に点々と捨てられていた。
午後8時、感染が怖いから店には入らず、邦彦はコインランドリー前のベンチでコンビニで買った、フランクフルトや野菜ジュース、おかかのおにぎりを食べていた。スマホで凄惨な事件を知った。
6月10日
日野から逃れるため詐病によって夕凪病院に邦彦は入院した。向精神薬を飲んだふりをしてごまかし、婦長の定めた病棟のルールに片っ端から反抗していく。グループセラピーなどやめて『北斗の拳』のマンガを観たいと主張し、他の患者たちに多数決を取ったりする。
最初は患者たちは決められた生活を望むが、邦彦とともに生活をするうちに彼に賛同するようになる。またほかの患者と無断で外出しクルーザーに乗せて、邦彦の女友達とともに海へ釣りへ行く。こうした反抗的な行動が管理主義的な婦長の逆鱗に触れ、彼女は邦彦が病院から出ることができないようにしてしまう。
ある日、患者が騒動を起こした際、止めようとした邦彦も一緒に、懲罰である異端者のフォークを受けさせられてしまう。異端者のフォークは、両端がフォーク状に尖った長い鉄をベルトやストラップにゆるく括り付けた拷問具である。
この拷問具は、対象者を横たわらせることの無いように天井から吊されている間に、あごの下の胸骨とのどの間に置いて皮製のストラップで締め付けるようにして使用される。この拷問具を装着した人は眠りに落ちることができない。疲れから頭を下ろした瞬間に、尖った部分がのどや胸を突き刺して激しい痛みを引き起こす。このとても単純な構造の拷問具が、人々を長時間、睡眠することを妨げるのである。
「グァーッ! 助けてくれぇ!!」
6月15日
「村岡や3人の女を殺したのは俺なんだよ」
昼食の時間、お粥を食べながらリョウってガキが喋った。
「どうだっていいよ」
邦彦は食欲がなかった。小百合を失って、うつ状態にあった。
「俺は10人殺すと神様になれるんだ」
「いっちゃってるんだね?」
16日夜、邦彦は病棟に女友達を連れ込み、酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎをやる。一騒ぎ終わった後の別れ際になって、リョウが女友達の1人を好いていることに気づく。邦彦は女友達に、リョウとセックスをするよう頼み込み、2人は個室に入っていく。2人の行為が終わるのを待っている間、酒も廻り、ついに寝過ごしてしまう。
翌朝、乱痴気騒ぎが発覚し、そのことを婦長からリョウは激しく糾弾され、母親に報告すると告げられる。そのショックでリョウは舌を噛んで自殺してしまう。邦彦は激昂し、彼女を絞殺しようとする。婦長を絞殺しようとした邦彦は他の入院患者と隔離される。
18日、夕凪病院。救命救急医・雑司ヶ谷大地のもとに1人の急患が運び込まれてきた。熱、喉の痛み、咳……これらはすべて新型インフルエンザに想定された症状だが、何かが違う。
有効な治療法が見つからず、ついに患者は死亡してしまった。無力さを嘆く雑司ヶ谷をよそに、事態はさらに深刻化する。同僚の医師・島村浩市をはじめとする医療スタッフや、外来・入院患者達までもが院内感染してしまい、病院はたちまちパニック状態に陥ってしまった。
20日、事態の調査と感染拡大を防ぐため、神奈川県警医療犯罪課の黒木塔子が派遣されてきた。塔子の姿を見かけて、動揺する大地。かつてふたりは恋人同士だったが、塔子に新しい彼が出来たことで、今は別々の道を歩んでいた。塔子はただちに病棟全体を隔離し、新規患者の受け入れを拒否するよう、病院側に要請する。そして非情ともいえるトリアージをすすめていく。はじめはその強引なやり方に反発する大地であったが、塔子を信じて、共に戦っていくことを決める。
一方、ウイルスの猛威は留まるところを知らず、恐るべき速度で全国的に蔓延していた。このままでは感染患者は数千万人を超えるという、戦災をはるかに上回る被害が予測された。そうなれば交通網は凍結されて、都市機能は停止、経済が破綻をきたして、日本の社会は崩壊してしまう。そして、ウイルスが世界各国へと拡がれば、人類は滅亡へと向かうことに……。感染爆発までのカウントダウンが始まった。
邦彦は救急車に乗せられて別病院に搬送された。
塔子は邦彦を守るように課長の浅井剛志から依頼されていた。
『おそらく、これはプローンの仕業だ。バイオテロを防ぐには賀来邦彦の力が必要だ』
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