2023年7月

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2023年7月

 3年前、部下の別所を何者かに殺されたショックから立ち直れずにいたプローンは、7月4日、夕凪駅前の交差点で飲酒運転でひき逃げ事故を起こしていたのである。別所は住宅展示場で何者かに頭を銃で射抜かれて殺された。おそらく、別所を殺したのは邦彦だ。    その事実をプローンから告白された黒木塔子は請われるまま夕凪城の天守閣でプローンを撃とうとするが、どうしても撃てずにその場から立ち去る。夕凪城は個人資産で、所有者の望月学(もちづきまなぶ)をプローンは買収していた。  塔子がプローンを殺せなかったのは、かつて先輩刑事が凶悪犯を銃で撃った瞬間、爆死したのだ。犯人はダイナマイトを腹に巻いていた。  また、あのパンデミックはプローンの仕業なんかじゃなく、単なるコロナだった。浅井の読みは大外れだ。    7月8日の午後6時、塔子は夕凪城の天守閣からプローンが飛び降り自殺をしようとしている現場にやってくる。プローンは涙ながらに塔子に許しを乞うが、塔子は断る。そして、プローンに抱きしめられた塔子はプローンの体をゆっくりと離すと、そのまま突き落とす。プローンは望み通りに死ぬ。 「あんたを愛したことはフェイクじゃないよ」  塔子は寂しそうに笑った。     7月12日  夕凪海岸近くの葬儀場  プローンの葬儀に出席した塔子は、プローンの隠し子の晴彦からプローンが作った茶釜の展示会に招待される。そして、調査官が塔子の前をうろつきはじめる。  実は調査官は塔子の妄想が生み出した幻だったのである。プローンの展示会にやってきた塔子は、プローンの遺作となった黒い茶釜を観ていて、涙を流した。   「大地に会いたい」  会場をふらふらと飛び出した塔子は別所とプローン、そして邦彦の幻を見る。    「おまえも別所のいる場所に連れてってやるよ」  邦彦に導かれるまま道路に歩み出た塔子はトラックにはねられる。病院で目覚めた塔子は医師の「生きているとは幸運だ」の言葉に苦笑いを浮かべる。  辰村晴彦(たつむらはるひこ)率いる小隊は横浜事変で香港のテロリスト『春虎(チュンフー)』の捕虜になる。部隊を救った邦彦は帰還後、英雄として称えられた。しかし、捕虜にされている間に小隊は春虎を後援するソ連軍のアナトリーらによる洗脳の実験台とされ、邦彦はチェスをするように促され、キングを見ると言いなりになるように洗脳されていた。  邦彦の母親、鈴子は彼女の再婚相手の国会議員・宮坂哲司(みやさかてつじ)を次期首相にするべく画策していた。邦彦は出征前、宮坂と対立する西尾将也(にしおまさや)の娘の京子と恋に落ちたが、鈴子に仲を引き裂かれていた。2人は再会後、結婚する。しかし、鈴子は邦彦にチェスを勧め、催眠状態になった邦彦に政敵の西尾を暗殺するように命令する。     桜木町にあるロープウェイ内で西尾を射殺した邦彦は無意識のまま、その場に居合わせた京子をも殺害する。  邦彦や戦友の行動を不審に感じた辰村は、恋人の深井悦子の助けも借りて、邦彦が洗脳にかかっていることを突き止める。辰村から真実を告げられ、洗脳が解けた邦彦は自分の母親から殺人を命令されていたことを知る。邦彦の洗脳が解けたことを知らない鈴子は、邦彦にキングを見せ、副首相に選ばれた夫が首相候補に繰り上がるよう、党大会で次期首相候補を暗殺するように命令する。当日、邦彦は首相候補の代わりに、宮坂哲司と鈴子を撃ち抜く。  長男の竜太(りゅうた)、冷静な次男直政(なおまさ)、ナンパな三男(ゆたか)、そして竜太の実弟でもある末っ子、義徳(よしのり)の4人は、殺し屋の義兄弟だ。  彼らは黒狼村の一軒家を根城にし、マネージメントを仕切る日野から依頼を受けて仕事をしていた。  近頃、仕事中に調子の狂う出来事が頻発、竜太は機嫌を害していたが、久々に大きな仕事が舞い込んでくる。  それは、各界著名人が招待される歌舞伎の上演中に、ある人物を暗殺することだった。  銃器を準備し、綿密に計画を練った竜太たちだったが、以前から彼らに目を付けていた特捜部の巌流島は、厳重な警備体制を敷いて、一網打尽にしようと企んでいた。  暗殺計画実行の当日、狙撃された男と依頼人の意外な関係が明らかにされるが、竜太は巌流島に追い詰められる。  竜太が射殺した佐野四郎は今はフィクサーとして活躍していたが、過去は夕凪電工の幹部で、依頼人の池亀和彦(賀来邦彦)は佐野の元部下だ。邦彦はリストラされたことをずっと恨んでいたらしい。  戦闘能力のかなり高い、邦彦が自ら戦わなかったのは田楽呑吉(でんがくどんきち)ってペンネームで書いた『サクリファイス』ってミステリー小説が流行ったからだ。  
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