2020年3月

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2020年3月

 3月1日  邦彦は、恋人で営業マンの小百合、豊後刑事、『イカロス』でジョブトレを行っている宇都宮永治(うつのみやえいじ)逢魔島(おうまじま)に自家用機で旅行に出かけた。宇都宮はどことなく柳楽優弥に似ていた。  邦彦は宇都宮にテクハラをした。  パソコンの知識不足などを馬鹿にしたりするのがテクノロジーハラスメントだ。『🧙獣の攻撃無力化』  邦彦はパソコンやスマホなどハイテクノロジーに詳しい。宇都宮は大学卒業後、ひきこもっていたらしい。『イカロス』は一度も就職がしたことない人を支援するセミナーを去年の4月からはじめている。宇都宮はパソコンの扱いがなってなかった。 『そこはコントロールとCキーを同時押しして…え? コントロールって何って? そんなことも分からないの? それじゃ、この先大変だぞ?』   宇都宮は幻聴に苛まれていた。    島には午後1時に到着した。  博学で本の虫の邦彦は山小屋で太宰治の『斜陽』を読みながら、小百合と豊後が浮気関係にある事を洞察力から疑っていた。  そんな中、現地に住む、俳優の弓削智久に似た貫太郎(かんたろう)の山小屋で、部屋に飾ってあった元女優の如月邦子(きさらぎくにこ)(吉田羊似)の写真に目を留めた豊後は彼女の写真を撮りに行こうと邦彦を誘い、小百合と貫太郎を残して撮影に向かった。貫太郎の話では邦子は逢魔島の東側にある御霊島(ごりょうじま)に住んでるらしい。船で行く手もあったが、邦彦たちは自家用機を使うことにした。  しかし、移動中に鳥の群れと衝突事故が起き、飛行機は墜落。3人は一先ず助かったものの、そこは人里離れた山奥で、3人は邦彦のサバイバルの知識を頼りに何とか下山しようとするが、突如現れた狼の襲撃により、脚を負傷していた宇都宮が真っ先に狙われ死亡する。  そんな中、豊後は兼ねて小百合と浮気しながら邦彦を殺して財産を奪おうと密かに考えていた事を、邦彦は悟ってしまう。  狼による襲撃と遭難を利用して自分を殺そうと企む豊後との攻防を邦彦は知識を駆使して挑んでいく。  翌朝、豊後の姿が見えないことを不審に思う邦彦の元に小百合から『逢魔島に魔女が現れた』と電話があった。奇妙に思った邦彦はアンドロイドで友人の麻酔科医、剣崎小太郎(けんざきこたろう)(ラサール石井似)に電話して逢魔島や御霊島についての奇妙な出来事を相談するが、そこで小夏は2つの島の歴史と魔女についての話をし、創設者の西園寺品子(さいおんじしなこ)の話も聞くことになる。    御霊学院は1892年に異世界から来た品子によって当初は剣道と神秘学の学校として創設されたが、品子には魔女ではないかという疑いがあった。品子が富と名声を得るにつれて周りからの疑いはますます増えていったが、1900年に彼女は火事で亡くなり、学院は剣道学校として品子の教え子が引き継いだという。また、魔女は狼をに契りを結んで集まりを形成し、狼から力を発揮するが、もし狼が死んだ場合はその集まりに参加していた魔女たちも一緒に死ぬという。  その夜、邦彦は意を決して秘密を暴こうとする。御霊学院に向かい、足音の数だけ廊下を歩くと、邦彦は校長室にたどり着く。そこで邦彦は壁に桃の飾りがあるのを見つけ、桃を回すと秘密のドアが開いた。奥の部屋では如月邦子たちが邦彦を呪う儀式をしている。この学院は魔女たちの館であった。邦子は品子の末裔だったのだ。  姿を見られた邦彦は体育館に逃げ込むが、そこには狼が佇んでいた。邦彦は腰を抜かした。 「もっ、もうダメだ……」  狼はガブリと邦彦の喉笛を噛んできた。  邦彦は不思議に思った。痛くもなけりゃ、血も出なかった。  狼は開け放しにされていた裏木戸から逃げてしまった。  さらに、保健室には豊後の惨殺死体が転がっていた。豊後は首を斬り落とされていた。  すると、邦子の嘲笑と共に突然、首なし死体が邦彦に向かって襲いかかってくる。絶体絶命のピンチとなった時、銀色に輝く刀を両手に構えた小百合が駆けつけた。  小百合は刀で邦子の喉を突き刺した。邦子は死に、館が崩れはじめる。阿鼻叫喚の中、やっとのことで館の外に逃げ出す邦彦。激しい雨が降りはじめた。 「その刀、どうしたの?」 「朱雀(すざく)家に古くから伝わるものよ……」  小百合の旧姓は朱雀というらしい。    2005年3月15日の夜、夕凪で6歳の芹沢聡一(せりざわそういち)が11歳の姉、滝枝(たきえ)を理由なく包丁で刺し殺す。それから15年間、聡一は精神病院に収容される。2020年3月15日、聡一の精神科医である千倉恒夫(ちくらつねお)と看護師の寺田寿美(てらだとしみ)が裁判所での聴聞に聡一を連れて行くために精神病院に到着する。  千倉は聴聞の結果、聡一が二度と同精神病院から解放されないことを望んでいる。しかし、聡一は彼らの車を盗んで精神病院から逃走し、夕凪へ戻る途上でケータイ欲しさに若者をナイフで背後から突き刺し殺す。地元に戻ると聡一は黒いマスクを薬局から盗み出す。  3月17日の午後5時半、聡一は高校生の奈良忍太郎(ならにんたろう)が長年放置された芹沢宅前で鍵を落とすのを目撃する。同宅は忍太郎の父親が売却しようとしている。忍太郎は聡一が一日中後をつけていることに気付くが、友人の沼田音々(ぬまたねね)野原春樹(のはらはるき)は彼の心配を意に介さない。       3月19日の午後2時、聡一を探して連城(れんじょう)刑事が夕凪にやって来て、町の墓地から滝枝の墓石がなくなっているのを発見する。20日の正午、連城は夕凪駅西口のカフェで私立探偵の六角(ろっかく)に会い、2人で聡一の家を捜索する。その場で、連城は六角に聡一は完全に悪であると告げる。六角は危機感を共有しないが、町中を警戒しに行く。  一方、連城は聡一の家で彼の帰宅を待ち伏せる。その夜、忍太郎はまだ5歳の妹、和歌子(わかこ)の子守をしていた。一緒にお絵描きした。 「これ、ママの絵」  和歌子はオレンジ色のクレヨンで画用紙に描いた。とても可愛らしい絵。  21日の午後5時頃、聡一は忍太郎らを尾行し、野原一家の飼い犬をハンマーで殴り殺す。春樹が窓越しに聡一を目撃して、指名手配されてる『賀来邦彦』だと思い込むが、忍太郎は信じてくれない。  22日早朝、精神科医の千倉のもとにFAXで『コロシテヤル』と脅迫状が届いた。  連城は千倉邸に赴いた。屋敷は夕凪の南東にあり、近くに湖がある。 「何か恨まれるようなことは?」 「音々という病院仲間とつきあっていたのですが、患者同士の恋愛はあまり好ましくないので、結婚を反対したことがありました」  連城は、六角を千倉の家に連れて行きその晩泊まらせる。連城が車に乗り込むと、聡一が後部座席から現れ、彼の首を絞めて喉を切る。  その後間もなく聡一は音々と夕凪駅東口のラブホに行き、激しいセックスをした。  真夜中、六角は水を飲もうと階段を降りるが、そこで聡一に出くわし銃で撃たれるが、六角は無傷だった。 「おまえ何者だ!?」  銃把を握る聡一の手がワナワナと震えた。  聡一は壁を突き抜けて千倉邸を逃げ去る。千倉を殺すことが出来ずに後悔する。  連城の死体はバラバラにして湖に捨てた。    一方、千倉は夕凪公園の路肩にて盗難車を発見し町中の捜索を開始する。23日の午後4時、六角は港近くにある看護師、寺田寿美の家に出かける。  寿美は実家住まいで、部屋は2階にあった。 「あーゆーサイコパスは千倉だけじゃなく、アンタも恨んでるかも知れない」  寿美が恐怖のうちに廊下へと駆け出すと、暗がりから聡一が不意に現れて、六角の腕をナイフで切りつけ、ベランダから飛び降りて逃げた。  けがを負いながらも六角はかろうじて逃げ切り、奈良邸に走って戻るが、階段を落ちたときに玄関の鍵をなくしている。和歌子が中に迎い入れると、六角は忍太郎と和歌子に隠れるように言いつけるが、電話線が切られている。聡一は窓から忍び込み再び六角を襲うが、逆に彼は縫い針で首を刺して動けなくさせる。聡一が死んだと思った六角はふらふらながら2階の忍太郎らの安否を確認しに行くが、聡一が生きていることに衝撃を受ける。忍太郎らには浴室に隠れるように言い、自分は寝室の押入れに隠れるが、聡一に見つかり襲われたので、ハンガーで目を突き刺して聡一が落とした包丁で胸を突き刺す。六角は忍太郎らに隣の家に飛び込んで警察を呼ぶように言う。彼らがいなくなると、聡一が再度起き上がって警戒心を解いている六角にゆっくりと近寄る。千倉は忍太郎らが家から逃げ出してきたところを目撃し捜索に向かうと、聡一と六角が2階で争っていることに気付く。六角が聡一の黒いマスクを取ると、六角は付け直すのをためらう。  夕凪警察署刑事課長、巌流島義一(がんりゅうじまぎいち)が駆けつけ、聡一を6発撃つと、聡一はバルコニーから地上に落ちる。巌流島は千倉に聡一が邦彦なのか問うと、千倉はそうだと答える。 「高校生に化けていたとはなぁ……」  巌流島は口をぽかりと開けた。  千倉がバルコニーに歩み寄り地面を見下ろすと聡一はいなくなっている。驚きもせず千倉が夜陰を見やると、その後ろで巌流島はティッシュで鼻を噛んでいる。 「聡一が逃げました」と、千倉。    
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