第六話「自由であれ、自由であれ自由であれ」

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第六話「自由であれ、自由であれ自由であれ」

3565276c-80fd-4ab4-9008-65e5c3d2aeed  僕の指には翼が生えていた。音が止まらない。  シアタールームの天井は青い空になり、メロディが成層圏の彼方まで飛んで行った。  僕は笑う。  スウィングの悪魔と一緒に、笑った。  ――なあ、悪魔。メロディには人を幸せにする力があるな。元気づけて、明るくして、どんなことも忘れさせてくれる。  イヤな自分も弱い自分も、言いたいことも口にだせない意地っぱりヤロウも、青い空の果てへ連れて行ってくれる。    この音が途切れた瞬間から、またダメな布池玻璃が戻ってくる。それでいいんだ。  だって、どっちも僕だから。  どっちの僕も受け入れてくれる人がいるから――それで、いいんだ。  澄がいる。僕の初めてのカノジョが。親友でカノジョの女の子が。  自由であれ、自由であれ自由であれ。  ただ、そのままの音であれ、布池玻璃(ぬのいけ はり)。  高らかに鳴り響くジャズピアノは、どんどん空を駆けのぼって、やがてどこかの世界で大きく爆発した。  目の前が白くなる。  気が遠くなるような心地よさの中で『ジャズの悪魔』が笑っていた。  『いいカンジじゃないか、おい。  じゃあ次も、一緒にギグしようぜ――』 (Mariya MuschardによるPixabayからの画像 )
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