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ウメハラは笑いながらそう答えた。
坂元が驚きを隠せない表情を浮かべていると、助手のライラが飲み物を運んできた。彼女はテーブルに二つのカップを置く。
「失礼します」
そう言ってその場を離れて行った。
「すいません、少しパニックになっています」
坂元は心を落ち着けるようにカップを手に取って熱いコーヒーを一口。ウメハラも同じようにそのカップに手をつけた。
「ああ、そうだ。カメラを回してもいいでしょうか? ビデオカメラで撮影をしておきたい」
「ええ、構いませんよ」
落ち着いた様子で坂元の提案を受け入れるウメハラ。そこにはなんの恐れもないように思えた。
坂元は棚からビデオカメラを取り出し、三脚を用意してウメハラの顔が映る位置に設置する。赤いランプが光り、撮影が開始されたことを示した。
「それがビデオカメラですか。初めて本物を見ました。資料としては何度か見たことがあるんですが」
「え、未来ではビデオカメラなどはもうないのですか?」
「ありませんね。先程も言いましたが、全てが小型化されている時代です。カメラなどは蚊ほどの大きさのドローン機がありまして、それを飛ばすことで360度自由な角度で撮影が可能です。もちろん、画像や映像の画質は肉眼と遜色がない」
「へぇー。凄い時代だなぁ」
坂元は感心しつつ、もう一度コーヒーで喉を潤した。若干手が震えていたのは、彼の話に衝撃を受け過ぎているからなのか。
「先程のこと、聞きそびれてしまったんですが、タイムマシンについて。それも小型化されているということ?」
「そうです。私の左腕に装着されたこの腕時計。これがタイムマシンです」
目を見開いて彼が差し出す左腕を見る。
それは何の変哲もないデジタル時計のように思えた。
「こ、こんなものが、タイムマシンなのですか?」
「そうですよ。驚きましたか? これに行きたい時代を入力して過去に遡るわけです。今のところ、未来に行くことはできませんが、過去ならばどの時代でも時間旅行が可能になりました」
坂元はまじまじとその腕時計を見つめる。
未だに信じられない、目の前にいるのが未来人だなんて、そう口に出してしまいそうだった。
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