かっこいい女

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「うん!」 突然、強く頷いて立ち上がる。 「え、どうしたんですか?」 後輩がキョトンとした表情でユウを見上げた。 「きゅーけい!」 それだけ言って席を離れた。 何かを決めた訳では無いけれど、うっすらと何処かに繋がるの光を見つけた気がして、ユウはその喜びで力強く喫煙所の扉を開けた。 ガコンッ! 勢いよく開いた扉が激しい音を立てて跳ね返る。 「…………っくりしたぁ、なんだ、ユウさんかよ」 中で肩をすくめていたのは上野だった。 「上野っち、お疲れ」 「おぉ、お疲れ」 友人の顔を見て、ユウの意識は思考の中から現実に戻った。タバコを何服かすると、すぐに興奮した心が落ち着いてくる。 「なんかあったの?」 上野が心配そうにユウの表情を覗く。 「や、なにも」 「……そんな風には見えないけど?」 わざわざ他人に話すほど、はっきりした何かが掴めたわけでも無かった。しかし、心配する友人には説明するべきかとユウは思い直す。 「いやね、ちょっと色々考えててね。どうやら私は、一人でずっと、いじけてたみたいだ」 「…………いじけてた?」 「うん。いじけてた。何やってもうまく行かなくて、誰も褒めてくれなくて、努力が無駄な使われ方をして。だから頑張るの嫌になって、ずっといじけてた」 「うん、気持ちはわかるよ」 上野は遠くを見たまま頷き、口を開いてモワリと煙を吐き出した。 「でもいじけながら、ちゃんと生活して仕事してきたからさ、気付いたら私も進化してた」 「進化?」 眠そうな目で振り向く。 「うん、色んなこと出来るようになってた。今まで作ってきたちっちゃい点が、ここに来て急に線になり始めている……感覚? もう昔の自分とは全然違うんだって思ったら、何か、うーん、なにか……またやってみたくなった」 ユウはほとんど独り言のように、窓の外を見つめたまま語った。上野はその横顔を見てハッとしたように真顔で頷いた。 「おぅ、いんじゃない?」 「うん。引きこもり、外に出る。の巻」 「そうか。引きこもってたのか、ユウさんは。でも……うん、ユウさんは、ちゃんとすごいよ? 何かよくわかんないけど、俺も応援するよ」 優しい声に、突然、ユウの気持ちが込み上げた。
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