完璧なプロポーズ

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完璧なプロポーズ

エリック・ケリー、28才。 職業、投資コンサルタント。 銀縁眼鏡がよく似合う端整な容姿。 名門大学を飛び級で卒業するほどの卓越した頭脳。 クライアントから絶大な信頼を寄せられ、周囲の人間からも慕われる人徳。 その全てを持ち合わせ、完璧超人と評される彼の計画もまた完璧なはずだった。 今日は恋人のスーザンと付き合って3年目の記念日。 決戦の舞台に選んだのはディナークルーズ。 船上で豪華な夕食を楽しんだあと、美しい夜景をバックにプロポーズする計画だ。 もちろん下準備もぬかりない。 今年の彼女への誕生日プレゼントはあえての指輪。一緒に選んでサイズはしっかりチェックした。 今日のためにあつらえたスリーピースのオーダーメイドスーツ。その内ポケットに忍ばせておいた指輪を……。 無意識のうちにエリックの指は内ポケットを探っていた。 指先に当たる固い感触。 なぜだ、ここにないはずのものが……ある。 ドクン。ひとすじの冷や汗が流れる。 家を出てしばらくしてから、玄関の鍵をかけ忘れたことに気づいた時と同じ感覚。 たいしてずれてもいない眼鏡を直しながら、エリックは今日のデートを振り返る。 待ち合わせ場所の桟橋に、15分前に到着。 いつも時間ぎりぎりにやってくるスーザンを出迎えた。 ここまではいつも通り。 18時、ディナークルーズの会場に乗船。 レストランから夜景を眺めながら、豪華なディナーを堪能した。 19時半に下船。今日はありがとう、楽しかった、と嬉しそうに微笑むスーザンの頬にキスをして、駅まで彼女を見送り……。 (なんてことだ) プロポーズするのを……忘れていた!!
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