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「……でね、わたし“はい”って答えたの。あの時のエリック、すごーくカッコよくてキュンとしちゃった」
ダイヤモンドが輝く婚約指輪を左手の薬指にはめたスーザンは穏やかに微笑む。
「ところどころ想像の斜め上いってるけど、まあ、ある意味完璧なプロポーズだね」
「ツッコミどころ満載だけどね、スーがキュンとしたならそれでいいと思う」
自分たちから質問した手前、あたりさわりのない感想を口にしたものの、スーザンからプロポーズの一部始終を聞いた友人たちは内心困惑気味だ。
「それにしても意外よね。完璧超人のエリックさんがあやうくプロポーズし忘れそうになるなんて。……おまけにプロポーズの言葉かんでるし」
「うふふ、エリックって玄関の鍵かけ忘れたまま家出ちゃったり、たまにうっかりさんなの。そういうとこがたまらなく可愛いの!」
なんでもこなせる完璧超人だけど、時々見せる隙が可愛くて。
プロポーズするためにパルクールで追いかけてくるとか、突拍子もないところもあって。
彼と一緒ならきっと毎日が楽しそう。
それが結婚の決め手だった。
「……あー、うん。エリックさんについていけるの、スーくらいしかいないよきっと」
「そうそう、ふたりものすごーくお似合いだし、式も楽しみだよ」
病める時も健やかなる時も、いつまでもふたり一緒に。
「ありがとう。……当日はブライズメイドよろしくね」
おっとりした口調でそう言って、スーザンは花のような笑みを浮かべた。
【おしまい】
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