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 月曜日に退院した律子は、火曜日も仕事を休んだ。汚れた浴衣をクリーニングに出し、その足でスーパーに寄ると、食用のほおずきが売っていた。 ”フレッシュな酸味と甘みでビタミンが豊富。女優の藤原紀香さんも大好きです”とポップに(うた)っていた。  買い物を終え、公園のベンチに腰を下ろした律子が、油蝉の降るような合唱に顔を上げると、今にも消えそうな飛行機雲が一筋、青い空に細い尾を引いていた。  すこしづつ消えてゆく飛行機雲をながめながら、律子は右手でそっと、お腹をなでた。  おもむろにトートバッグから食用ほおづきを一つ取り出し、橙色の実をじっと眺めていると、妹の穂花からLINEが届いた。 『ダンナとケンカしたから、りつ姉のとこ泊めてくれる?』  やれやれと苦笑し、ほおずきの実を服の袖でさっと拭いて口に放り込む。  犬歯でゆっくりと薄皮を破ると、甘酸っぱい汁がじゅわっと、口の中を染めていった。 ー おしまい ー
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